国内4大メジャー大会のなかでも最高峰といわれる「日本オープンゴルフ選手権」は、日本一のゴルファーを決する日本唯一のナショナルオープン。日本各地のゴルフ場を転戦するサーキット方式で、兵庫県での開催は2005年の廣野ゴルフ倶楽部大会以来、ちょうど10年ぶりとなる。80年の歴史を振りかえると、大正時代から第一次ゴルフブームに沸いた昭和30年代に開場した、いわゆる古き名門での開催が常。そのなかにあって、昭和50年に開場した当倶楽部が、その舞台に選ばれることは極めて異例ともいえる。
全英オープン、全米オープンにつぐ世界3大オープンをめざして改革が進む日本オープン。今年から、ハンディキャプ、年齢、性別に関係なく出場できる「ドリームステージ」が設けられ、実力のあるアマチュアに大きく門戸が広げられた。アマチュアでツアー優勝をとげた石川遼や松山英樹につぐニューヒーローの誕生が例年以上に期待できる。また、ナショナルオープンとしてさらに権威を高めるために、世界ランキング100位以内の上位5名に出場権を与える規定が設けられ、昨年大会には前年のマスターズチャンピオンのアダム・スコットが参戦し、日本のファンを驚かせた。今年の日本オープンは、韓国で開催されるアメリカ選抜と世界選抜の対抗戦「ザ・プレジデンツカップ」の翌週に行われることから、スケジュールや移動距離的にも参加しやすく、あっと驚くような世界トップ選手の参戦も期待できる。
「日本オープン」というと、狭くしぼられたフェアウェイ、一打罰必至の深いラフ、固くて止まらないグリーンをイメージするゴルファーも多いだろう。実際、大会のたびにメディアは「我慢大会」と表現し、出場選手も「いかにボギーを打たないか」を「合い言葉」のように繰り返してきた。
しかし、世界4大メジャーのコースセッティングに追随するように、2014年の千葉梅郷コース大会からは、コースセッティングのコンセプトが「タフだけどフェア」に変更された。今大会は大会史上最長の7416ヤードで開催されることも注目されている。飛ばさなければいけないホールもあるが、パワーとテクニックの両方が試されることとなる。そのかわりに、リスク覚悟で果敢に攻めれば、見返りが与えられるセッティングが施されるだろう。選手の瞬時のマネージメント力やイマジネーション、技術を引き出す新メジャーセッティングは、ギャラリーにとってもスリリングで、見ごたえある闘いが期待できそうだ。また、毎年見慣れた「サントリーレディス」と、ピンポジションや男子と女子との飛距離を比較して観戦するのもおもしろい。
「日本オープン」はメジャーチャンピオンとして歴史に刻まれる栄誉と、5年間の無条件シード権が与えられることから、誰もが「強く勝ちたい」と意識する大会。勝ちを意識すると自然と力がはいるが、大会を制してきたレジェンド達と肩を並べると思うと、さらに余分な力やプレッシャーが選手を襲う。
明らかに言葉で説明できない「重圧」が、メジャーには存在する。その極限状態のなかだからこそ、最高のプレー、最高のドラマが生まれ、メジャーでしか体験できない興奮と感動が生まれる。ゴルファーなら一生に一度はこの目でメジャーの迫力をみておきたい。